ぐだぐだ書いている間に10日も経ってしまいましたが、11/8-9に横浜のぴあアリーナMMで開催された「α SPECIAL EVENT 2023」に行って来ました。
このイベントは11/7に発表された新製品を実際に試すことができる場として、アリーナを貸し切って開催されました。
参加には事前予約が必要。僕は2日目の11/8 17:00-18:30の回に参加しました。
用意されていたコンテンツは以下の通り
バトミントンの撮影:α9Ⅲと300mm GMの組み合わせで近距離からバトミントンを撮影できる。
バッティングの撮影:近距離でバッティングを撮影し歪みがないグローバルシャッターの性能を確認できる。
フラッシュ撮影:フラッシュを用いた女性モデルの撮影ができる。
ステージ講演:スポーツ写真家・小橋城氏、同・水谷たかひと氏、動物写真家・野口純一氏による新製品トーク。
自分はフラッシュは使わないし、画質やAF性能をチェックしたかったので1Fのバトミントンの撮影体験のみ参加。
各エリアに用意されている機材の数には限りがあるため、バトミントンの撮影ではスタッフの方の説明を除いて3分間の時間制限がありました。
さすがに3分では様々な性能を確かめるには無理があるので、何度か並び直して気になっていた点を確かめました。
α9Ⅲの画質やいかに
各所で話題になっているα9Ⅲの画質。最も気になる点なので重点的に確かめてきました。
一つ残念だったのは撮影した画像の持ち帰りがNGだったこと。招待されているプロの方々は画像の持ち帰りが可能だったようですが、一般人は一律不可。
背面液晶に映った画像をスマホで撮影するのもNGとのことで、ブログに掲載できる写真が一枚もありません。
α9Ⅲのみならず、300mm GMを私物のカメラにつけて撮影した画像の持ち帰りも不可。
もっともこの制限があったのはまだ試作機段階のファームウェアだからだそう。よくある言い方ですが、α9Ⅲの場合は発売までに2回画質のブラッシュアップを控えているとのことで、製品版ではほぼ確実に画質が向上するはずです。
RAWの画質まで向上するかは聞きそびれてしまいましたが…。(なさそう)
そのため、カメラの背面液晶で見た撮って出しのJPEGによる評価となることをご承知おきください。
また、バトミントンの会場はまぁまぁ暗くて低感度時の画質のチェックまではできませんでした。
私物のα9と比較した感想をまとめると、
・絵作りが違い過ぎて比較が困難
・解像感や色味は圧倒的にα9Ⅲが良好
・ノイズは確かに多いが、めちゃくちゃ酷いわけではない
・ノイズの出方はAPS-Cや高画素機に似ている。
まず最初に感じたのはデフォルトの絵作りの違い。
最新世代のカメラなのでWBや色味が向上しているのは当然なのですが、シャープネスとノイズ除去のバランスも随分と変わった印象。
以前からソニーのノイズ処理は粒状感をある程度残すことでディテールを保持する傾向にありましたが、α9Ⅲでは特にその傾向が強いように感じました。
その結果、画素数がほぼ同じα9と比べて解像感は大きく増していましたが、輝度ノイズはより目立つようになりました。
ノイズの出方がAPS-Cや高画素機に似ていると感じた原因はおそらくここ。もとのノイズ量が多いのに、デフォルトのノイズリダクションが弱い。
しかし絵作りの違いを差し置いてもα9Ⅲの方がノイジーなのはおそらく確実。
高感度ではノイズの量や彩度の低下が目立ち、特に2400万画素のフルサイズ機としては弱い。
もとのノイズ量は6100万画素のα7RⅣ・Ⅴと同じか少し良いレベルくらいかな?
フルサイズとして失格レベルにノイズまみれというわけではなかったのでそこはホッとしました。マイクロフォーサーズと同等と書いているサイトがありましたがそれは絶対ないと思います。
以下のレビューでもおおよそ同じ見解が示されてますね。
参考までにα9のISO4000はこんな感じ
厳密に既存のカメラと比較できたわけではないですし、製品版では画質も向上する予定とあって画質の評価はまだ早計でしょう。
現時点の情報や触った感想を基にまとめると、高感度画質は最新のフルサイズとしては何とか許容範囲といった感じ。
動体性能
上で写真を載せたようにバトミントンの撮影体験の待機列に並んでいる間、私物のα9と300mm F2.8 G SSMⅡでも競技の撮影をしていました。
α9のAFも相当良いはずですが、ボディもレンズも最新機種のα9Ⅲと300mm GMの組み合わせの前では勝負にならず…。
300mm GMの性能も相まって、瞳にピントがあった写真が量産されていくのは圧巻でした。
初代9からの進化を感じやすいとお薦めされたのが、狙った選手の手前にネットが入ったり別の選手が前を横切るシチュエーション。
何度か試しましたがネットが顔に被った状態でもピントを外さないのは凄かった。
α9Ⅲではフォーカスエリアが新たにいくつか追加されています。
これまでS・M・L・拡張の3種類だったフレキシブルスポットにXSとXLが追加。
僕は基本Sか拡張しか使わないのですが、XSはより高い精度で合わせる必要がある場面では便利そう。
また、横長や縦長といった任意の形のフォーカスエリアを設定できるモードも追加されていました。
α9Ⅲ自慢の超高速連写ですが、常時120コマ/秒での運用は現実的ではないと考えているようで、イベントで強く押されていたのが「連写速度ブースト」という機能。
この機能をカスタムボタンに割り当てることで、ここぞという瞬間だけ120コマ/秒に連写速度を上げることができます。初期設定では新設されたフロント部のC5にこの機能が充てられており、シャッターを押しながら操作できます。
メディア容量やバッファなどを考えると速くても30-60コマ/秒が常用ラインでしょうから、この機能の搭載は便利そう。
シャッター全押し時から最大1秒間遡って記録するプリ撮影機能も、撮影対象によってはすごく便利な機能かなと。
水族館では魚のあくびを撮るのに便利そう、くらいしか用途が思い浮かびませんが
、歪まないグローバルシャッターの特性と併せて野球のバッティングの撮影は捗りそう。バットに当たったときだけシャッターを全押しすれば、バットとボールが当たる瞬間をほぼ確実に抑えられる、と考えると凄い。
左肩のドライブダイヤルには新しく連写H+が追加されていて、各連写速度のコマ数はユーザーが設定できるようになっていました。
フリッカーについてスタッフの方に聞いてみたところ、全ての画素を同時に読み出すグローバルシャッターの採用で、個々の画像内での露出ムラはなくなったそうです。
代わりに人工光源の点滅は写真1枚1枚の明暗差に現れることがあるそう。
α9Ⅲでは点滅の周期を検知して明るい瞬間だけ記録できる機能も付いているようですが、ぴあアリーナ内の照明はフリッカーが目立たず試す機会はありませんでした。
SONY純正のEマウントレンズ以外を装着した際の連写制限はこれまで通りな模様。以下持って行って試した実測での連写コマ数。
MC-11を介した105mm F1.4 DG HSM | Art (キャノンEF)
AF-CではMAX15コマ/秒
(その他設定未検証。AF性能はα9Ⅲ>α9)
他社製EマウントレンズもMAX15コマ/秒と思われます
LA-EA5を介した300mm F2.8 G SSMⅡ
AF-CではMAX10コマ/秒
(その他設定未検証。AF性能はα9Ⅲ≒α9)
LA-EA5を介したAPO MACRO 180mm F2.8 EX DG OS HSM
AF-CではMAX10コマ/秒
(その他設定未検証。AF性能はα9Ⅲ≒α9)
スピードに大きく振ったカメラなので、α9Ⅲを買うならEマウントの純正レンズで固めないと厳しいですね…。
各種機能やボディ
今持っているレンズに純正が1本しかなく、フラッシュも使わない僕にとって最も大きな進化に感じたのは新採用のボディデザイン。
デザインが変わるごとにグリップが改善されているαシリーズですが、今回のα9Ⅲは完成形と思える出来。α9では縦グリ常用派の自分も、300mm F2.8 GMくらいなら縦グリなしで問題なく扱えると感じました。
シャッターや各ボタンの押し心地もさらに良くなっています。
新・縦位置グリップ「VG-C5」の出来も素晴らしい。
グリップ感は言わずもがな、これまで省略されていた2つ目の背面ダイヤルや新設されたフロント部のCボタンも完備。縦位置一体型とさして遜色ない操作性が確保されたように思います。
ファインダーは9比で大幅な大型化・高精細化が図られているのに加え、気のせいでなければシャッター半押し時のEVF画質の低下がマシになった感覚。
実使用では絶対に便利な高解像の4軸液晶はイベントでは展開する機会がありませんでした。
300mm F2.8 GM OSS
正直α9Ⅲより感動したのがは新しいサンニッパ。
その一番の売りはやはりレンズ重量でしょうか。
サイズ自体はマウントの300mm F2.8 G SSMⅡと大差ありませんが、重量では約4割の軽量化が図られています。
この差はめちゃくちゃ大きくて楽々手持ち撮影が可能。(300mmGⅡでも手持ち撮影はできるが長時間構え続けるのはきつい)
1キロ台の中望遠単焦点は多く扱ってきましたが、重心がボディ寄りな設計の恩恵で感覚的にはそれらより軽く感じました。
1.4kgってマイクロフォーサーズのサンヨンと同等なんですよね。
イメージサークルやF値の違いも考えると、いかに驚異的な軽さかがわかります。
α9Ⅲと合わせた際の動体性能は、今使っているα9×300mmGⅡとの差が大きすぎて泣きたくなるレベル。
前述のように300mmGⅡはα9でも9Ⅲでも連写はMAX10コマ/秒。
9Ⅲ×300mmGMは連写速度落としても30とか60出してくるうえ、動体へのピント精度が非常に高くほぼすべての写真で瞳にガチピンを決めてきます。
描写性能も確実に向上しているんですが、それ以上にピント精度の高さがキレのある描写に繋がっている印象。
300mmGⅡでたまに感じる、開放でのぬるさや軸上色収差、高画素機にはちょっと厳しいシャープネスといった描写面の弱点は軒並み改善され、ヌケ感のある現代的なレンズになっていました。
300mmGⅡでは非搭載だった手振れ補正も、協調補正に対応したものが搭載されていて安心感あり。1/100以下までSSを落とした際のファインダー像の安定感には天地の差がありました。
α9Ⅲの購入は見送ることに
発表時やイベントで触った際はそのスペックや性能に舞い上がってしまいα9Ⅲを買う気満々でしたが、少し時間が空いた今はα9Ⅲを見送ってα1を導入しようと考えています。
発表される以前からα9Ⅲが出たら乗り換えようと考えていましたが、その前提に”α9と同等以上の高感度耐性が確保されているだろう”という予想があったのは事実。
僕は基本的に全ての写真にAIを使ったノイズリダクションを掛けるので、α9Ⅲで多少ノイズが増えてもどうにかできる気もしていました。でも、画質にうるさい自分の性格や膨大な枚数に後処理を施す手間を考えるとα9Ⅲは向いていないのかなぁと。
α1の高感度耐性がα7RⅤより上なの考えると、α9Ⅲは解像力と高感度耐性の両面でα1に劣ることになります。
α1でもα9よりノイズは多いわけですが、解像力の大幅な向上を考えればやむを得ないのかなと。
ただ、暗所の撮影を考えること高感度画質に優れたサブ機は欲しくなるところ。
現状、α9ユーザーの受け皿となりうるα1やα9Ⅲがともに高感度に強いとは言えない性能(上の比較を見る限り、α1はかなり健闘していると思いますが)。
最近のソニー機は画素数を上げてくる傾向にあり、現行の機種で高感度に強いといえるのはα7Ⅲやα7Cといった古い機種のみ。
最新の上位機種のサブ気に使うには物足りなさは否めません。
あれだけボディの種類があるソニーなんだから、1機種くらい高感度に強い2400万画素程度の新しいカメラがあってもいいと思うんですよね。
加えてもう一つ大きいのは、僕が純正のEマウントレンズを1本しかもっていないこと。
α9Ⅲは画質をいくらか犠牲にしてまでスピードに振り切ったタイプのカメラなのに、その高速性能を活かせるレンズが1本しかないのは実にもったいない。
ましてα9Ⅲは非常に高価なので、ひとたびボディを更新したら当面レンズの入れ替えなど不可能です。
連写性能や被写体認識能力などα9Ⅲに劣る面もありますが、α1の動体性能は今でも一級品。連写は30コマあれば多くのシーンで不足ないし車や飛行機は撮らないし…。
現在α1の新品価格は70万円台前半まで下がってきており、α9Ⅲより安価。
高感度画質を重視しα9Ⅲの高速性を活かせるレンズを持ち合わせていない自分は、画質面で優位で連写も実用上十分でやや安価なα1でいいかなぁと落ち着いた次第。
それか前々から使ってみたいα99Ⅱに手を出すか…
改善したグリップや新しいCボタン、4軸化した液晶といったボディの刷新はめちゃくちゃ魅力的なんですけどね。画質がせめて同等だったら買ってたかなぁ。
高感度を重視するうえ純正レンズの持ち合わせがない僕には合わないカメラでしたが、久々にソニーらしい野心的な良い製品が出たとは思います。円安の影響もあって価格は約80万円と相当に高額なα9Ⅲですが、革新性を考えるとむしろ安価ともいえるはず。光量が稼げる環境で一瞬を狙うフォトグラファーには最高のカメラだと思います。
逆にイベントを通して物欲が上がったのが新サンニッパ。
圧倒的な軽さに画質、動体性能とすべてにおいて抜群に完成度が高くて、このレンズを買えば望遠域の撮影体験はめちゃくちゃ向上するんだろうなぁと思いました。
あのレンズは実際に触ってしまうとみんな欲しくなると思います。
でもまだ300mmGⅡを半年前に買ったばかり…。買ったばかりですからね…。