一昨日、ソニーからフルサイズミラーレス「α9Ⅲ」と望遠単焦点「FE 300mm F2.8 GM OSS」が発表されました。
新製品たちの性能の凄まじさは以下のリンク、HPでの紹介とプロモーションビデオからご覧ください。
α9Ⅲ
さて。僕が今使っているボディは初代の「α9」。
メインレンズはAマウント時代の「300mm F2.8 G SSMⅡ」です。
なのでなんと一夜にして両方の後継が発表されたことに…!!!
過去一番ワクワクした昨日の新製品発表。
新世代のαはどれだけの進化を遂げたのか、そして買い替えざるをえないのか…
【11/10 一部画像を追加しました】
スペック比較
ということで、まずは主要スペックの比較から
α9 (2017年発売) vs α9Ⅲ
300mm F2.8 G SSMⅡ (2012年発売) vs 300mm F2.8 GM OSS
α9Ⅲではほぼ全方位のスペックが、300mm GMではレンズ構成や重量が大きく進化していることがわかります。
α9Ⅲ
動体性能
α9Ⅲは世界で初めてとなるグローバルシャッターを搭載。
α9・α9Ⅱで採用されていた積層型2420万画素センサーも高速性能に定評がありましたが、新センサーはこれを圧倒する驚異的な性能。
全画素同時読み出しによって、ローリング歪みとフリッカー、フラッシュ同調速度の制限を一気に解消。
連写速度は最高で120コマ/秒と前機種のなんと6倍に。
超高速読み出しと各種プロセッサーの高速処理によって、AF性能も大きく向上した模様です。
いま僕が愛用しているα9は2017年の発売と少し古い機種ではありますが、その動体性能は未だ超一級品。
20コマ/秒を誇る高速連写に60回/秒の高速演算に裏打ちされたAF性能。α9で良かったと感じた瞬間が何度もありました。
ブラックアウトフリーかつ無音の撮影体験も一度慣れてしまうと離れることができません。
α9の2年後に発売されたα9Ⅱは控えめな進化でしたが、今回のα9Ⅲは6年分の進化を凝縮した出来となっているように感じます。主要な進化は以下の通り。
連写速度:20コマ/秒 ⇒ 120コマ/秒
AF演算回数:60回/秒 ⇒ 120回/秒
被写体検出機能:人・動物 ⇒ 人・動物・鳥・昆虫・車・列車・飛行機
プリ撮影機能:シャッターを押す1秒前まで遡り記録
動体性能においては、ありとあらゆる面で圧倒的な進化が感じられるのではないかと思います。まぁα9の動体性能に不満を感じる場面ってしょっちゅうあるわけじゃないし、連写120コマなんて持て余しちゃうんですけどね。
個人的に一番期待したいのはフリッカーからの解放。
α9の電子シャッターの幕速は被写体が歪まない程度には速いけど、人工光源下ではフリッカーがかなり出やすいぐらいには遅いんですよね。古い施設の蛍光灯だったりプロジェクションマッピングのライトだったり、水族館撮影ではフリッカーが出やすいシーンが多々あります。
下の作例だとイルカのお腹の部分に縞模様が出ているのですが、これでも可愛い方なんですよね。(がっつりフリッカーが出た写真は消しちゃうので残っていない)
α9のメカシャッターはMAX5コマ/秒とめちゃくちゃ貧弱。音もしょぼいしAF性能は低下するしフリッカーレス機能もないし…。
こんなわけでフリッカーが酷い環境下では撮影が困難で、メカシャッターで10コマ出るα7Ⅲを残しておけばよかったと思うシーンもありました。
α9Ⅲではグローバルシャッターの構造上、フリッカーが発生しないようなので水族館撮影では大きな恩恵がありそうです。
気になる点を挙げるとすれば、純正のEマウントレンズ以外を使うと連写性能が著しく制限されると思われることでしょうか。これまで通りの縛りがあれば、最高120コマ/秒を誇るα9Ⅲでも以下のような制限が課されることとなります。
サードパーティー製EマウントレンズやMC-11を装着した場合、AFCでの連写速度はMAX15コマ/秒。
LA-EA5を介してAマウントレンズを装着した場合、AFCでの連写速度はMAX10コマ/秒。
このあたりは今日この後行く予定の「α SPECIAL EVENT 2023」で確かめてきたいと思っています。
画質
こちらは一転いくらか不安を感じる部分。α9 IIIの発表を公式チャンネルのライブ配信で見ていたのですが、画質の優位性についてはほとんど触れられていなかったんですよね。
グローバルシャッターは画質・発熱・価格に課題があってなかなか民生機に降りてこない、という噂は以前からまことしやかに言われていたと記憶しています。なので、旧型機に対する画質面でのアドバンテージはないのかなぁとこの時は思っていました。
そのあとスペックシートを見ると常用ISO感度は250-25600とのこと。α9やα9Ⅱと比べ低感度側で1段ちょっと、高感度側で1段狭くなっています。
暗いシーンが多い水族館の撮影ではISO100はほぼ使わないわけですが高感度は多用します。
下の写真のように、アクアパーク品川でのイルカショーや薄暗い水槽の撮影では常時ISO6400前後の設定を強いられる場合もあります。
スペック通り1段分高感度性能が低下しているならかなり大きながっかりポイントになるのは事実。
X(旧Twitter)上でもこの点が盛んに取り上げられ、既存のセンサーと比べて見劣りする部分がある中でグローバルシャッターを搭載したソニーの判断に否定的な声も多く見られます。
画質面で退化があるなら残念ではありますが、僕は以下の点からα9Ⅲをダメと決めつけるには少し早いように感じています。
・α9シリーズはスピードに重きが置かれたカメラ
・高速読み出しと画質はトレードオフ
・実際にどれほど差があるかまだ明確には分からない
読み出し速度と画質がトレードオフになるのはいつものことで、初代α9もα7Ⅲに比べるとシャドー部のブロックノイズが目立ち画質面では劣勢です。
上の画像はα7ⅢのISO5000の画像ですが、AIでのノイズリダクションなしでこの低ノイズです。高速読み出しのα9だとこうは行きません。
今回のα9Ⅲも画質面では劣る部分もあるのでしょうが、高速読み出しによる恩恵との釣り合いが取れているかどうかが評価の基準になると思います。
まだ出回っているサンプルは少ないですが、以下のリンク先の画像を見る限り極端に悪いという印象は受けません。
まだまだ画質の評価は早計と思いますが、連写性能・AF性能は旧型より劇的に進化しており、多少画質が低下していても総合的に見れば十分な進化と言えるのではないでしょうか。
もちろんこの点も今日のイベントでチェックしてみる予定です。
その他
α9Ⅲの外観を見て最初に気づいた点は2つ。
① かなりごつくなってFnボタンが増えてる!
② 前面のα9のロゴが金から白になってる…
初代α9からどのようにボディデザインが変わったか。
α9、α9Ⅱ、α9Ⅲの順に画像を並べてみました。
α9Ⅱではボタンやダイヤルといった操作部位が刷新。グリップ形状も変更されました。
今回のα9Ⅲでもさらなる操作性の改善が図られています。
グリップの高さが増した結果、シャッターボタンの位置は従来より高くなりました。
ボディの幅は広くなり、グリップとマウント間のスペースを従来より広く確保するとともにFnボタンがボディ前面に追加。
露出補正ダイヤルはより汎用的な電子ダイヤルに代わり、静止画と動画の切り替えスイッチが追加。
ファインダーは大型化され、液晶モニターは従来のチルトから4軸マルチアングル液晶モニターに変更されました。
グリップ横に新設されたC5ボタン。
この位置だとシャッターボタンに人差し指を掛けた状態でも中指で操作できるんですよね。
一時呼び出し系の機能を割り当てると使いやすそう。
グリップ形状の見直しに伴い縦位置グリップも新規のものが登場。(使用バッテリーは従来通り)
ファインダーは解像度と倍率が向上し、リフレッシュレートも高速化。
液晶モニターはチルトとバリアングルを掛け合わせた4軸タイプに変更されました。
ファインダーは撮影時常に覗く部位ですし、きつい体勢で水槽を撮るシーンを考えると柔軟に動かせるモニターは大正義。
これが一番嬉しい改善ポイントかもしれない。
買い替えは…
初代α9ではWBや絵作りの安定感、ボディの造りが主な不満点となっているのですが、α9Ⅲはいずれの不満もしっかりと解消してくれそう。
念願の9シリーズの更新なので、すぐには無理ですが1年以内に購入したいと考えています。
画質がよほど期待外れじゃない限り!!
300mm F2.8 GM OSS
互換性・AF性能
僕が今愛用している「300mm F2.8 G SSMⅡ」は2012年に発売された、SONY Aマウント対応の一眼レフ用のレンズです。
α9はじめEマウントボディへの装着には、マウントアダプターの使用が必要です。現在は最新のアダプター「LA-EA5」を間に挟んで使用していますが、各種機能の制限があり完全な性能を発揮できているわけではありません。
主要な制限を挙げると
・AF-C時の連写速度は最高10コマ/秒
・Aマウント、Eマウント問わずテレコンの使用は不可
・開放F値以外ではレリーズタイムラグが増える
300mm GⅡのAFは10年以上前の発売の割にはかなり高速で、ある程度の動体なら十分に追える性能だと感じています。
それだけに連写速度とテレコンの使用に制限があるのが一番の泣き所。
この点、300mm GMは連写は120コマ/秒に対応しており、もちろんテレコンも装着可能。
AFモーターも最新のリニアモーターに代わっており、AF速度も超高速の域になっているはず。
ボディをα9Ⅲに買い替えた時、サンニッパの新旧で連写速度が12倍変わるってなかなかきついですよねぇ…。
GⅡ買ったばかりなんだけどなぁ…。
参考までに旧サンニッパとボディごとの対応情報がわかるリンクを。
SONYの互換情報は異常に手厚くとても古いミノルタ時代のレンズまでカバーしているのですが、ちょくちょくわかりづらいところがあります。
この表記を見ると特に制限はなさそうに見えますが、マウントアダプター自体による制限の記述が省かれているので実際は先のような制限があります。
画質
まず両レンズのMTF曲線はこちら。
これを見るとGMは当然として、古いGⅡも文句なしの性能に見えます。
でも実際に撮影してみるとGⅡは設計の古さを感じるシーンが多々あります。
ソニーのJPEGはシャープネス処理がうまいので、撮って出しだと「おお、キレキレじゃん」と思うのですが、RAWで開くと鳥の羽毛など高周波の解像力を出すのが難しい。
DXO PURERAWなどを通すことでシャープネスを補うことは可能ですが、玉ボケの縁取りや軸上色収差の補正など、最新世代のレンズと併用すると見劣りする点はいくつかあります。
それもそのはず。ソニーのサンニッパの歴史は以下の記事に詳しいのですが、GⅡの基本的なレンズ設計は2003年の旧ミノルタ製「AF APO TELE 300mm F2.8 G (D) SSM」から変わっていないのです。
新しく発表されたGMは光学設計を一新。
レンズ構成は12群13枚から17群21枚へと劇的に複雑化しました。
135mm単焦点をSIGMA Artからソニー純正のGMに切り替えた時あまりの高画質に驚いたので、最新設計となった300mm GMの画質にも期待しています。
最後にGⅡの名誉のために書き加えておくと、GⅡもめちゃくちゃ良いレンズです。
ミノルタが設計した最後のレンズだったようでかなり気合の入った設計だったとか。
最新のレンズと併用すると…というくだりの最新レンズとは、ソニー「FE 135mm F1.8 GM」やシグマ「135mm F1.8 DG HSM | Art」といった現代最高峰のレンズたちなのでかなり酷な比較をしています。
イルカショーの撮影では解像力に不満は全く感じませんし、AF性能や重量も十分以上。
出てくる絵も素晴らしいし所有欲も満たしてくれるし、手元のレンズでは一番のお気に入りです。
GMの開発発表が既にあった中で購入したレンズですし、まだまだ使い続けていきたいと思っています。(故障したとき部品が残っているのかは不安だけど…)
重量
最近ソニーから発表されるレンズは小型化・軽量化にも重点が置かれており、サンニッパの開発発表があったときもどこまで軽量化されるのかというのは一つ楽しみにしていました。
結果的に300mm GMは1470gと他社比でも圧倒的な軽量化を実現。
GⅡとの比較ではレンズ単体で約37%、GⅡ+アダプター比では約40%の軽量化となっています。
先述したようにレンズ枚数は劇的に増加しているにもかかわらず、ここまでの軽量化がなされているのは凄いとしか言いようがないですね。
これは近年流行の前群の枚数を減らす設計が効果的だったよう。レンズの重心も随分ボディ寄りになったはずなので、振り回す際の負担も大きく軽減されているはずです。
GⅡも以前使っていたSIGMA「120-300mm F2.8 DG OS HSM | Sports」に比べると遥かに軽量で、手持ち撮影や持ち歩きはかなり楽になりました。
これがさらに1キロほど軽くなると取り回しは劇的に良くなるはず。サンニッパを大砲と呼ぶ時代は終わったのかもしれません。
買い替えは…
買い替えたいけど優先順位は低いかな、というのが今時点での感想です。
高速連写機の性能をフルで使える点や、進化したであろう描写、劇的な軽量化、前はなかったレンズ側の手振れ補正…。
全面的に性能アップしているのは魅了(魅力過ぎる)んですが、まずはボディを更新したいという思いがあるのと300mm GⅡがまだまだ一級品なのを考えると、すぐに買い替えという選択はないかな。
α9Ⅲが極めて高価なのでボディを更新したら当面何も買えないはず。
GMと比較すると見劣りしちゃうかもしれないGⅡですが、愛着もありますしまだまだ頑張ってもらいたいと思っています。「GMに負けないぞ!」という新たなモチベーションも得たので、もっともっと使い込んでいきますよ!
いざ横浜へ
スペック表見てうんちく垂れていても始まりませんからね!
今日11月9日にぴあアリーナMMで行われる「α SPECIAL EVENT 2023」で新製品の実力を確かめてくる予定です。
α9や300mm F2.8 GM OSSはもちろん、そのほかの曲者レンズもつれていく予定なので次の記事で比較や挙動について紹介できたらと思います。